「ご機嫌いかがですかな、香也子嬢」

「ご機嫌いかがですかな、香也子嬢」
不意に従兄の小山田整の声がした。
「つまんないわよ」
香也子は少しも驚かない表情で、ゆっくりとふり返った。
「君が、つまんないと退屈してる間も、この地上では、一分間にどれほどのできごとが起こっているか、知っているかね」
体格のいい整は、ピンクと白の縞のワイシャツの袖をたくしあげて、逞しい腕をむき出しにしている。
「またはじまった、整さんったら」
整は突如として現れ、突如として妙なことをいいだす。
「いいかい、香也子。この一分間にだよ、流れ星が、実に六千個も地球に落ちてきているんだ」
どうだ、驚いたろう、といわんばかりの顔に、
「まあ! 六千個も」
香也子は驚いて目を見張る。かわいい童女の顔になっている。
鳶が、頭上でのどかに啼きながら、すべるように沢のほうに降りて行った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  4. と、その時電話のベルが鳴った。ハッとしたように章子が受話器を取った。 「もしもし、橋宮でございます。あら、政夫さん?」

  5. と、丘の上に車が現れた。車は真っすぐに香也子のほうに下ってくる。見覚えのある金井政夫の車だ。

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