「やっぱり、馬子にも衣装よ」

それを見送りながら、香也子は呟いた。
「やっぱり、馬子にも衣装よ」
香也子は自分の着ているクリーム色のワンピースを眺め、この色が自分にいちばん似合うと思った。あと二十分後に章子の恋人がくる。英語塾には、若い女性も何人かは通っている筈なのに、章子という目立たぬ女性を選んだ金井という青年に、香也子は興味を持った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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