「あの、あと二十分ぐらいしたら、おみえになる筈ですけれど」

「あの、あと二十分ぐらいしたら、おみえになる筈ですけれど」
扶代が容一にいう。
「着替えか? このままでいいだろう」
「でも、ズボンがちょっと汚れてますわ。じゃ香也ちゃんも会ってくださいね」
扶代は何のこだわりもない笑顔を見せて、容一や章子と家にはいって行った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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