「あの、あと二十分ぐらいしたら、おみえになる筈ですけれど」

「あの、あと二十分ぐらいしたら、おみえになる筈ですけれど」
扶代が容一にいう。
「着替えか? このままでいいだろう」
「でも、ズボンがちょっと汚れてますわ。じゃ香也ちゃんも会ってくださいね」
扶代は何のこだわりもない笑顔を見せて、容一や章子と家にはいって行った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 車は火山灰地の白い丘の上を走って行く。 「ねえ、金井さん。いや、今日からお兄さんと呼ぼうかしら。いい? お兄さんと呼んでも」

  2. 母の保子は、朝起きるとすぐに掃除をはじめた。

  3. 青年はギターを膝に抱え、

  4. 香也子がいった。 「あら、婚約じゃないの? まだ結婚するかどうか、わからないの」

  5. 「ここにいることが、よくわかったねえ」 香也子は容一の顔も見ずに、天井から吊りさげられたランタンに目をやって、

  6. 「ああ、ああ、いつきてもいい丘だなあ、ここは。こぶしほころび、桜咲きか……」