つんとする香也子に、容一はいった。

つんとする香也子に、容一はいった。
「鈍感で申しわけない。なるほど、なるほど」
容一は、扶代からそれとなく金井政夫のことは聞かされていた。だから今日の金井の来訪は、容一にとってごく自然なことだった。
「ごめんなさい、香也ちゃん」
章子はうつむいたまま、
「でも、まだおつきあいしてるっていうだけで……お知らせするほどの間柄じゃないんですもの。昨日、お父さんとお母さんに紹介してほしいっていわれて、わたしだってびっくりしたくらいなんだもの」

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 「卓球ができれば、立派なもんですよ。わたしは自転車にも乗れない」

  2. 幾折れもの道が木立をぬって頂上へとつづいている。

  3. 人々の視線は、再び茶席に戻っている。

  4. 金井が、香也子の両頬を手で挟んだ。そしてそっと唇を近づけようとした時だった。うしろで、けたたましくクラクションが鳴った。

  5. 恵理子の着ふるしを、香也子はよく着せられた。

  6. いま思うと、外から帰ってきた父が、洗面所で、