つんとする香也子に、容一はいった。

つんとする香也子に、容一はいった。
「鈍感で申しわけない。なるほど、なるほど」
容一は、扶代からそれとなく金井政夫のことは聞かされていた。だから今日の金井の来訪は、容一にとってごく自然なことだった。
「ごめんなさい、香也ちゃん」
章子はうつむいたまま、
「でも、まだおつきあいしてるっていうだけで……お知らせするほどの間柄じゃないんですもの。昨日、お父さんとお母さんに紹介してほしいっていわれて、わたしだってびっくりしたくらいなんだもの」

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 「ハ、ぼくは章子さんのいいように」 と、金井は容一のほうに頭をさげた。その金井に香也子が何かいおうとした時、整がいった。

  2. 「もしもし、お兄さん? わたしよ。香也子よ」 甘い声を香也子は出す。 「ああ、香也子さんですか。いけませんよ、章子さんのそばで電話をしたりしちゃ」

  3. 「ね、お兄さん、わたしにもキスをして」 「えっ?」 金井は思わず口からタバコを離した。

  4. 金井はいま、思いきって橋宮容一に、章子との交際を求めたばかりなのだ。

  5. 章子は立ちあがって、 「あ、香也ちゃん、すみません」 と、盆を受けとろうとした。

  6. 香也子は再び視線を姉の恵理子に戻した。