義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。

義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。向かいの山を眺めていた香也子がふり返っていった。
「ほんとにお似合いよ、章子さん」
口に嘲笑がうかんでいる。香也子は扶代を母と呼ばず、章子を姉と呼ばない。小母さんと呼び、章子さんと呼ぶ。
「ありがと」
章子がはにかむ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 香也子は今朝、新聞をひらき、そこに、五、六行の小さな記事を見て胸をとどろかせた。

  2. 「ここの中華料理はうまいね。実はこの前の日曜日、うちに客があってね。中華料理の手づくりをご馳走したんだ。それが意外とうまくてね。お前たちに食べさせてやりたいと思ったもんだから……」 「どなたがおつくりになったの」

  3. 襖があいた。ふとったおかみが、 「社長さん、焼けぼっくいに火ですか」 と、銚子をテーブルに置いた。

  4. 「何を考えていたんだ」

  5. この川を隔てた向こうは

  6. 車は火山灰地の白い丘の上を走って行く。 「ねえ、金井さん。いや、今日からお兄さんと呼ぼうかしら。いい? お兄さんと呼んでも」