義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。

義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。向かいの山を眺めていた香也子がふり返っていった。
「ほんとにお似合いよ、章子さん」
口に嘲笑がうかんでいる。香也子は扶代を母と呼ばず、章子を姉と呼ばない。小母さんと呼び、章子さんと呼ぶ。
「ありがと」
章子がはにかむ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 凞子はおそるおそる再び頬に手をやった。絹じゅすのような、曾ての肌理細かな頬とは、似ても似つかぬ手ざわりに、凞子は唇をきっとかんだ。

  2. 香也子は再び視線を姉の恵理子に戻した。

  3. その時、階段に静かに足音がして恵理子が茶の間にはいってきた。 「あら、もう三時? おばあちゃんお帰りなさい」

  4. 「あら、もう章子さんの彼氏、みえる頃じゃないかしら」

  5. 容一が保子の潔癖性に手を焼いたのは事実だった。

  6. 容一がそういったとき、幼い頃、散歩に手を引いてくれた父の手の感触が、ふっと思い出された。