義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。

義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。向かいの山を眺めていた香也子がふり返っていった。
「ほんとにお似合いよ、章子さん」
口に嘲笑がうかんでいる。香也子は扶代を母と呼ばず、章子を姉と呼ばない。小母さんと呼び、章子さんと呼ぶ。
「ありがと」
章子がはにかむ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 「ねえ、お姉さん」 残ったコップの水を一息に飲んで、香也子はテーブルに片ひじをおき、身を乗り出すようにしていった。

  2. じっと恵理子を見つめている香也子の姿を、ツネと保子が息を殺して眺めている。

  3. 「香也子、お前、お姉さんに久しぶりで会ったんだろう。まず挨拶をしたらどうだ。怒るのはそのあとでもいい。なあ、恵理子」 「香也ちゃん、しばらくね」

  4. と、丘の上に車が現れた。車は真っすぐに香也子のほうに下ってくる。見覚えのある金井政夫の車だ。

  5. 玄関までの、五メートルほどの道の両側に、ピンクの芝桜が咲き、

  6. 香也子が先に立ち、橋宮容一と妻の扶代、そしてその娘の章子があとにつづく。