「どうした。コーヒーを飲まないのかい」

「どうした。コーヒーを飲まないのかい」
むっつりと黙りこくっている香也子に、たまりかねて容一がいう。
「飲むわ」
いままでむっつりとしていた香也子が、不意にニコッと口もとにえくぼを見せる。何だ、怒っていたのではなかったのかと思ったほどに、香也子は突如として気分が変わる。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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