正門は重々しい鉄柵の門扉に閉ざされ、

正門は重々しい鉄柵の門扉に閉ざされ、人が近づくと、鎖につながれたシェパードのトニーが噛みつかんばかりに激しく吠え立てる。
「高い塀だねえ。俺はまた、刑務所かと思ったよ」
恵理子の家にも、この家にも始終現れる、例の口のわるい小山田整がいって、香也子に叱られたことがある。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 「おいしいわ。とってもおいしいわ」 香也子がいった。テーブルの上には、牛肉とピーマンと地物の筍のいため煮、毛蟹を使ったフーヨーハイ、それに容一の好きな八宝菜、酢ブタなどがいっぱいに並べられている。

  2. そのときも、恵理子は焼却炉にゴミを捨て、いつものようにマッチで火をつけた。

  3. 「そんなこといったって……」 「ね、お兄さん。わたし、結婚してもらわなくてもいいの。ただ一度だけ、キスをしてほしいの。ただ、それだけなの」

  4. 恵理子は洗面所を出ると、二階の自分の部屋にあがって行った。

  5. 「まあ、すてき!」 崖ぶちのあずまやにはいった香也子が叫んだ。

  6. 「あのう、お姉さま」 凞子の傍らに八重は腰をおろした。