沢を隔てた向かいの山が、日一日と鮮やかな芽吹きを見せてきている。

沢を隔てた向かいの山が、日一日と鮮やかな芽吹きを見せてきている。萌黄色の山に白いこぶしや桜の花が咲いているのも美しい。ここ高砂台の丘の上は、しゃれたたたずまいの家が散在し、ところどころに落葉松や柏林が残っていて、別荘地のような趣がある。その中で、橋宮容一の家だけは、五百坪近い敷地を高いブロック塀でぐるりと囲い、近代的な豪奢な邸宅の構えを見せている。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 香也子が先に立ち、橋宮容一と妻の扶代、そしてその娘の章子があとにつづく。

  2. 「もうぼくに用事がなければ失礼します」西島はきっぱりといった。

  3. 母の保子は、朝起きるとすぐに掃除をはじめた。

  4. 「おとなしいところがいいんだろう。ところで、お前もお茶でも習ったらどうだ」 容一はようやく、いいたかったことをきりだした。

  5. と、その時電話のベルが鳴った。ハッとしたように章子が受話器を取った。 「もしもし、橋宮でございます。あら、政夫さん?」

  6. 玄関までの、五メートルほどの道の両側に、ピンクの芝桜が咲き、