三百坪ほどの広い庭は、なだらかに傾斜しつつ、沢の端に至っている。

三百坪ほどの広い庭は、なだらかに傾斜しつつ、沢の端に至っている。築山が前庭にあり、家のうしろは、香也子の、
「ゴルフ場のような庭にしたいの」
とねがったとおりに、広々とした芝生にした。香也子はここにプールもほしいという。今年は、そのプールも造ってやろうと、容一は考えている。生みの母と別れ、姉の恵理子と別れた香也子が、容一には何かふびんでならないのだ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 子供のように勢いよく走って行く香也子のうしろ姿を、西島広之は微笑して見送った。

  2. 母が父と別れたのは、父に女ができたからだと聞かされていた。

  3. 「もしもし、お兄さん? わたしよ。香也子よ」 甘い声を香也子は出す。 「ああ、香也子さんですか。いけませんよ、章子さんのそばで電話をしたりしちゃ」

  4. 「…………」  香也子は向かいの山を眺めながら何か考えているふうだった。

  5. 香也子は椅子ごと、ぐいと扶代と章子のほうを向いた。

  6. 「素顔のほうがきれいだよ、香也子」 「まさか」 化粧した顔のほうがきれいだと、香也子は信じきっている。