同じ日。橋宮容一は、庭のテーブルでコーヒーを飲みながら、

同じ日。
橋宮容一は、庭のテーブルでコーヒーを飲みながら、傍の香也子をちらちらと見ていた。別れた妻の保子によく似た香也子の横顔が、今日はひどく不機嫌だ。その不機嫌の原因を測りかねて、容一は再び視線を芝生に戻す。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 二」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 「おいしいわ。とってもおいしいわ」 香也子がいった。テーブルの上には、牛肉とピーマンと地物の筍のいため煮、毛蟹を使ったフーヨーハイ、それに容一の好きな八宝菜、酢ブタなどがいっぱいに並べられている。

  2. 「いま、お兄さん、好きな人ができたらって、おっしゃったわね。じゃ、その好きな人がお兄さんだったら、どうするの」 「え?」

  3. 整は今日、章子からの電話を受けて、金井の相伴にやってきたのだった。整の車がバス通りを下って行った時、香也子が金井の車に乗るのを見かけた。

  4. 新芽のけぶる木の間越しに、旭山の裏手の山々が見える。

  5. 香也子は今朝、新聞をひらき、そこに、五、六行の小さな記事を見て胸をとどろかせた。

  6. 「手があがったかね」コップにビールを注いでやりながら、容一がいう。