いつかまた、この場所で  木下真綾

私は中学三年生から高校三年生の今まで、児童養護施設で生活しています。そして、これからは保育の短期大学に進学しようと考えています。短期大学で学び、子どもたちに対する理解を深めた上で、今生活しているような児童養護施設に就職し、子どもたちを支える保育士として働くつもりです。
保育士を目指したきっかけは、私の暮らしている児童養護施設で働く保育士の先生に、たくさん助けていただいたからです。中学生の頃は友達関係もうまくいかず、周りの大人たちに心配をかけるようなことばかりしていました。そんな中、私にしっかりと向き合ってくれ、一緒に抱えていた問題を解決しようとしてくれました。まだまだ未熟ですが、少しずつ心身ともに成長し、前向きになっていきました。だから、私みたいに悩み、苦しんでいる子どもたちに寄り添って、笑顔を増やしていける保育士になりたいです。
そして、私はもう一つやりたいことがあります。それは、児童養護施設に対する誤った認識を変えることです。社会全体で、きちんと正しい認識を持つ人が増えれば、施設で生活している子どもたちが生きやすい世の中になるはずだと考えるからです。

さて、あなたは児童養護施設といえばどのようなイメージを思い浮かべますか。近頃、テレビなどで児童養護施設について取り上げられることが増えてきました。例えば、テレビドラマの「明日、ママがいない」では、施設での劣悪な環境などが放送され、社会全体が社会的養護を必要とする子どもたちの存在を認知するようになりました。認知が深まったことは素晴らしいことだと思います。しかし、誤った捉え方をしている方が多いのは、悲しいです。「明日、ママがいない」で、親のいない子供たちが多く描かれていた為に、施設で生活していると言うと、可哀想だと言われることがあり、酷い場合だと同情心から涙を流す人もいます。確かに、同じように親の顔さえ知らない子どもも多くいます。しかし、可哀想なんかじゃなく、自らの課題を乗り越えられるようにみんな努力して毎日、楽しく生活しています。他にも、私は高校に進学し、新しい友達に施設出身だと打ち明けた際に、「人殺したん?」「窃盗?」「なにしたん?」と聞かれました。つい最近まで中学生だったので、施設のことを理解していないのはしょうがないことかもしれません。でも、私はその言葉にとても傷つきました。施設から高校進学する人の多くは施設だと明かさないそうです。それは、私のように理解していない人たちが傷つけることを言ってきたり、変に同情されたくないと考えているからです。そのため、どうしても家族の話になると嘘に嘘を重ねてしまうことになるのです。施設で生活していると伝えて、今までと何ら変わらない関係性を続けることができる人が何人いるのでしょうか。やはり、施設に理解がある人と、その人自身を見てくれるような人でないと難しいと思います。
施設によって多少の異なりはあると思いますが、そんなに大きな差はありません。断言します。施設で生活する子どもたちは決して可哀想ではありません。親から愛情を貰えなかった子もいますが、施設の大人たちにあふれんばかりの愛情を注いで貰っています。本物の親ではないけれど、私たちのことをしっかり考えてくれる大人たちがたくさんいます。変わっている子どもたちも多いですが、みんな互いの個性を尊重しながら生活しています。私たちが一般家庭の子供と違うところは、親と暮らせないことだけです。確かにルールは厳しいし、毎日集団生活で、息がつまることは多くあります。しかし、私たちは過酷に生きてきたからこそ、しんどい人の気持ちがわかる優しい人になれます。

今はまだ、高校卒業後の進路として就職を選ぶ子どもが多いです。それは、金銭的な問題と、施設から自立して進学することは困難だと言われているからです。金銭的な問題においては、社会養護を必要とする子どもたちに対する、返還不要の奨学金が増えてきています。社会が少しずつ施設出身の子どもたちに対する援助をしようという考えを持ってくれるようになり、大変うれしく思っています。また、自立しての進学が困難だと言われていることに対しては、先輩の中で進学して卒業することができたという話が少ないからだと思います。これは、私が身をもって、夢叶えることは可能だと証明します。
私は、これからの児童養護施設で暮らす子どもたちが夢を持ち、叶えれるような社会にしていきたいです。施設出身だからといって偏見や差別を受けることは間違っています。家で生きづらかった子どもたちが生きづらさを感じることのない世の中になっていってほしいです。
人々に植え付けられたイメージを払拭するのは時間がかかります。しかし、一人ひとりが児童養護施設に対して、関心を持ち、正確な情報を得ることによって、変えていけると思うのです。子どもたちの明るい未来をつくるためには、社会全体として今のままではいけないという意識を持つことから始めるべきだと私は考えています。

木下真綾(大阪府立箕面東高等学校3年) 優秀賞 A 自由作文部門
三浦綾子記念文学館 第20回三浦綾子作文賞 2018(平成30)年

第22回三浦綾子作文賞 募集

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