恵理子は洗面所を出ると、二階の自分の部屋にあがって行った。

恵理子は洗面所を出ると、二階の自分の部屋にあがって行った。まだあの青年が川岸にいるかどうかを確かめたかった。部屋の窓に寄ったとき、恵理子は、ハッとした。青年が若い女性と肩を並べて、川の畔を歩いて行くうしろ姿が見えたのだった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 一」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  6. 「いま、お兄さん、好きな人ができたらって、おっしゃったわね。じゃ、その好きな人がお兄さんだったら、どうするの」 「え?」