テレビの中では、若い女性が海べに立って、去って行く男の姿を見つめている。

テレビの中では、若い女性が海べに立って、去って行く男の姿を見つめている。その女性の白い着物の裾が風にゆれ、目には涙がいっぱいにたたえられている。男の足跡は打ち寄せる波にかき消されていく。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 一」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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