「茶道教授 藤戸ツネ」と書いた看板

「茶道教授 藤戸ツネ」と書いた看板のかかっている黒塀の門をはいるとき、恵理子はふり返らずにはいられなかった。再び青年が恵理子を見つめていた。恵理子は思い切って会釈をした。青年が軽く手をあげた。ただそれだけのことだった。が、恵理子の胸は急にふくらんだ。その青年には、いままで誰にも見たことのない何かがあった。それが何であるかを、恵理子は正確に言いあらわすことはできなかった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 一」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。

  4. 「大変な人ねえ」 扶代が楽しげにいった。

  5. 二歳年下だが、八重は凞子と時折まちがわれるほどに、背丈も顔かたちもよく似ている。

  6. 「おとなしいところがいいんだろう。ところで、お前もお茶でも習ったらどうだ」 容一はようやく、いいたかったことをきりだした。