恵理子の立つ、川一つ隔てたこの道には、

が、恵理子の立つ、川一つ隔てたこの道には、いま、車はおろか、人影もない。川に向かって、小ぎれいな住宅の、赤や青の屋根屋根が、途切れ勝ちにひっそりと並んでいるばかりだ。川を境に、静と動の世界がある。それが恵理子の心を惹く。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 一」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 恵理子は焼却炉のそばを離れたかったが、燃えつきるまでそばについているように、常々保子からいわれている。

  2. が、近ごろは、なぜか時おり父がふと懐かしくなる。

  3. 扶代と章子の手を引いて、あわてて逃げ出す容一を、 「お父さん!」 と呼んだ香也子の声は、かん高かった。

  4. と、ビールを飲みながら、ふっと笑って、 「いやですねえ。昔の話をむし返して。

  5. 菊天で容一に会った時、容一は保子の指に指輪のないのを見ていった。 「買ってやろうか」

  6. いつも家の中で洋裁をするか、祖母のお茶の稽古の手伝いをするだけの恵理子の生活は、ほとんど異性に接する機会のない生活だった。