物語を〈聴く〉という、発見  田中綾

文学館のホームページに、次々と新しい情報が掲載されています。
「三浦綾子ARアプリ」「オーディオライブラリー」「キャラクター」「綾コレカード」「生誕100年記念事業」――全国の文学館に先駆けて、さまざまな新事業に取り組んでいるところですが、〈聴く、物語〉と銘打った「オーディオライブラリー」は、新しく、かつ、日々の暮らしを再発見させてくれる存在です。
小説『果て遠き丘』の朗読はじめ、『道ありき』を脚色した「朗読劇(リーディングシアター)」、文学館オリジナルキャラクターが声で案内する「レイの模擬講座」など、第一弾はすでに無料配信されています。
家事や作業をしながら、また、通勤やドライブ中、あるいはなかなか眠りにつけない時など、「オーディオライブラリー」はラジオ番組のような感覚で三浦綾子の作品世界にいざないます。
不思議なことに、耳で聴くと、活字を目で追っていた時とはまた異なる印象を受けるのです。登場人物の台詞が際立ってきたり、これまで読み過ごして来た自然描写が、ふいに色彩ゆたかに立ち上がってきたり。
三浦綾子が発した物語を書きとめた三浦光世は、第一読者として、そのような新鮮な聴き方をしていたのでしょうか。
今後さらに内容も充実させていきますが、常に何か“発見”があり、明日のひかりをより輝かせていくような、そんな試みを重ねる文学館でありたいと願っています。

田中綾 三浦綾子記念文学館 館報「みほんりん」第43号 2019(令和元)年8月6日

館長ブログ「綾歌」三浦綾子記念文学館

関連記事

  1. と、丘の上に車が現れた。車は真っすぐに香也子のほうに下ってくる。見覚えのある金井政夫の車だ。

  2. 香也子がいった。 「あら、婚約じゃないの? まだ結婚するかどうか、わからないの」

  3. 新芽のけぶる木の間越しに、旭山の裏手の山々が見える。

  4. 私の弟  市川莉子

  5. 恵理子と別れたのは、香也子が十歳のときだった。

  6. 茶席を出た香也子は、桜の木陰にいる祖母と、母の保子を見出した。