創意に満ちた文学講座を  田中綾

毎年、元旦に三浦綾子の小説を読み、新たな一年を生きる指針としています。この2020年は、『われ弱ければ 矢嶋楫子伝』を読みました。ちょうど、5ページの作文賞コメントで、和寒町賞を受賞した宮島梧子さんが触れてくれましたが、女子学院の初代院長として尽力した教育者です。
矢嶋楫子は、有島武郎の長編『或る女』の登場人物・五十川女史のモデルでもあり、むしろ私は、有島武郎の筆を通して矢嶋楫子に関心を抱きました。その意味では、『或る女』のアナザーストーリーとしての『われ弱ければ』という位置づけも、ある意味興味深いものと思います。
作家同士のつながりや、作品同士の照応関係など、新たな角度からの読み返しは、さまざまな発見をもたらしそうです。
文学館でも、昨年度は文学講座として旭川ゆかりの詩人・小熊秀雄をテーマとした文学講座を催しましたが、今年度は3ページにあるとおり、井上靖について2回にわたってお話をいただきます。
三浦綾子を基軸に、時代やスタイルの異なる作家たちとの意外な接点を見出だしていく――そのようなクリエイティブな作業は刺激をもたらしてくれるのではないでしょうか。
多様な価値観が混在し、感動の共有がなかなか難しい今日ではありますが、ことばの力を丁寧に確かめていきたいとも感じています。
今年度も、さまざまな文学館の試みをお楽しみいただけますよう。

田中綾 三浦綾子記念文学館 館報「みほんりん」第44号 2020(令和2)年3月1日

館長ブログ「綾歌」三浦綾子記念文学館

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