店内はひっそりとして客が二組ほどしかなかった。ま昼のせいだろう。容一、保子、恵理子の三人が、いちばん隅の席に向かい合っていた。 「いい娘になったねえ。まったくいい娘になった」

店内はひっそりとして客が二組ほどしかなかった。ま昼のせいだろう。容一、保子、恵理子の三人が、いちばん隅の席に向かい合っていた。
「いい娘になったねえ。まったくいい娘になった」
容一はさきほどから、同じことを目を細めて、幾度もいっている。
「そうですよ。恵理子は、ほんとうにいい娘ですよ」
牛肉とピーマンのいため煮を小皿にとりながら保子がいう。そのきものから出た肉づきのいい腕が、ふっくらとなまめかしい。恵理子は、母の保子の表情が、いつになく若々しいのに、何か痛ましさを感じた。別れた夫に会う女は、はたしてみんなこのような表情になるだろうか。そんな思いが、ふっと心をよぎった。

三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 七」

『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。

  4. 「だからいったことじゃないか。第一だよ、わしに女ができたからって……そりゃ女をつくることは悪いよ。悪いがねえ、保子、俺だって男だからね。たまにはほかの女にも手を出すさ」

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