「香也ちゃん」 たった一人の妹の名を、恵理子はそっと呼んでみる。

「香也ちゃん」
たった一人の妹の名を、恵理子はそっと呼んでみる。あの青年と並んで、ぎこちなく茶席についていた香也子が、たまらなく愛しい。馴れた席でもないのに、あの席につらなったのは、どんなに必死の思いであったろうと、恵理子は胸が熱くなる。それは、あの時のくいいるような香也子の激しいまなざしが、何よりもそれを語っているような気がする。実の母と実の姉を、どんなにか慕ってやってきたのだろうと思う。これも、あれ以来くり返し恵理子の心にかかることだった。

三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 六」

『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 香也子は、ひとくち汁をすすって、 「あ、そうそう。ね、お父さん。わたしね、あの時ボーイフレンドができたのよ。お茶席で、わたしの隣に正客になった人」

  2. じっと恵理子を見つめている香也子の姿を、ツネと保子が息を殺して眺めている。

  3. 「あなた、よかったわ、香也ちゃんに誘われて。旭川にこんなきれいなところがあるとは、知りませんでしたよ」

  4. 行く手の畔に立つ数本のイタリヤポプラを見た。

  5. 青年はギターを膝に抱え、

  6. 客が帰ったあと、母はその客のさわったとおぼしきものいっさいの消毒をする。