あけ放った窓から、木工団地の工場の機械のうなりが、絶えず低くひびいてくる。 恵理子は、頼まれたスーツの裾をまつっている。

あけ放った窓から、木工団地の工場の機械のうなりが、絶えず低くひびいてくる。
恵理子は、頼まれたスーツの裾をまつっている。あるとも見えない風に乗って、タンポポの穂絮が窓からはいってきて、そのまつる手にとまった。恵理子は立って、その穂絮を窓から放った。穂絮は頼りなげに漂って行く。
「オーライ、オーライ」
トラックを誘導する声が、向こう岸に聞こえる。ふと見ると、百メートルほど先の配送センターから、トラックが出てくるところだった。旭川木工団地の製品は、この配送センターから全国に向かって発送されるのだ。いま、橋の上を、幾棹もタンスを積んだ大きなトラックが渡って行った。あのタンスを、どんな女性が、どんな家庭の中で使うのか。いつものことながら恵理子は思う。

三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 六」

『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 旭山は、恵理子たちの家から車で二十分ほどのところにある美しい小山である。

  4. 「あの……」追いついて口ごもった香也子に、青年はふり返った。

  5. 「香也子、お前、お姉さんに久しぶりで会ったんだろう。まず挨拶をしたらどうだ。怒るのはそのあとでもいい。なあ、恵理子」 「香也ちゃん、しばらくね」

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