整は今日、章子からの電話を受けて、金井の相伴にやってきたのだった。整の車がバス通りを下って行った時、香也子が金井の車に乗るのを見かけた。

整は今日、章子からの電話を受けて、金井の相伴にやってきたのだった。整の車がバス通りを下って行った時、香也子が金井の車に乗るのを見かけた。香也子の性格をのみこんでいる小山田整には、ぴんとくるものがあった。遠くから後を尾けて行ってみると、案の定、途中で香也子が金井の肩に頭をよせるのが見えた。車は観音台の霊園のほうにむかって行く。そこが人けのない淋しい道であることを、小山田整も知っていた。金井の車が道の途中にとまった。整の車が近づくのも知らずに、ふたりが顔を近づけていた。クラクションを鳴らすと、あわててふたりは離れた。車を降りた整は、
「やあ、ご両人、といいたいところだが、相手がちがうじゃないか、相手がよ。香也ちゃん、こっちの車に移んな」
そういって整は、香也子をつれて戻ってきたのだ。
「まあ、悪いようにはしないからさ。ぼくだって、そう不粋じゃないからね」
金井にもそういって、ひとまずみんなで夕餐に顔を出したのだった。

三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 五」

『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 「…………」  香也子は向かいの山を眺めながら何か考えているふうだった。

  2. それは、数日前、従兄の小山田整から、恵理子のうわさを聞いていたからだ。

  3. 「旭山の桜は、もうすっかり散ったでしょうね」 「何をいっているんだよ。一週間も前に散ったんじゃないのかい」

  4. 二人は顔を見合わせて、椅子に腰をおろした。 「これで第一関門はパスしたようだね」

  5. 茶席を出た香也子は、桜の木陰にいる祖母と、母の保子を見出した。

  6. 香也子は二人を見ると、ついと顔をそむけた。