金井が、香也子の両頬を手で挟んだ。そしてそっと唇を近づけようとした時だった。うしろで、けたたましくクラクションが鳴った。はっと金井はハンドルをとった。車がようやくすれちがうことのできる狭い道なのだ。あわてて金井は車を左に寄せたが、うしろから再びクラクションが鳴った。
「これだけ寄せれば通れるのになあ……」
ふり返ると、思いがけなく香也子の従兄の小山田整が、車から降りてきたところだった。
三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 四」
金井が、香也子の両頬を手で挟んだ。そしてそっと唇を近づけようとした時だった。うしろで、けたたましくクラクションが鳴った。はっと金井はハンドルをとった。車がようやくすれちがうことのできる狭い道なのだ。あわてて金井は車を左に寄せたが、うしろから再びクラクションが鳴った。
「これだけ寄せれば通れるのになあ……」
ふり返ると、思いがけなく香也子の従兄の小山田整が、車から降りてきたところだった。
三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 四」