車はいつのまにか、高砂台から観音台につづく、馬の背に似た丘の尾根を走っていた。

車はいつのまにか、高砂台から観音台につづく、馬の背に似た丘の尾根を走っていた。右手に深い落葉松林がつづき、左手の疎林を透して、旭川の屋並みが、雨雲の下に大きく広がっていた。
「凄いですねえ、この落葉松林は」
密生した落葉松林の中は夜のように暗い。何か鬼気迫るような暗さだ。
「とめて、お兄さん」
車がとまった。

三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 四」

『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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