青地に白の、水玉模様のこうもり傘をさして、香也子は小雨の外に出た。庭の牡丹がアララギの陰に華やかに咲いている。しっとりとぬれた神居古潭石が、牡丹の傍にかぐろく美しい。シェパードのトニーが尾をふって鳴き立てる。
「散歩じゃないのよ、トニー。いい人を迎えに行くの」
香也子はトニーの頭をなで、門を出た。
三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 三」
青地に白の、水玉模様のこうもり傘をさして、香也子は小雨の外に出た。庭の牡丹がアララギの陰に華やかに咲いている。しっとりとぬれた神居古潭石が、牡丹の傍にかぐろく美しい。シェパードのトニーが尾をふって鳴き立てる。
「散歩じゃないのよ、トニー。いい人を迎えに行くの」
香也子はトニーの頭をなで、門を出た。
三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 三」