青地に白の、水玉模様のこうもり傘をさして、香也子は小雨の外に出た。庭の牡丹がアララギの陰に華やかに咲いている。

青地に白の、水玉模様のこうもり傘をさして、香也子は小雨の外に出た。庭の牡丹がアララギの陰に華やかに咲いている。しっとりとぬれた神居古潭石が、牡丹の傍にかぐろく美しい。シェパードのトニーが尾をふって鳴き立てる。
「散歩じゃないのよ、トニー。いい人を迎えに行くの」
香也子はトニーの頭をなで、門を出た。

三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 三」

『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  5. 「あの……」追いついて口ごもった香也子に、青年はふり返った。

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