菊天で容一に会った時、容一は保子の指に指輪のないのを見ていった。
「買ってやろうか」
「いいのよ、お茶をしてると、指輪は邪魔なの。茶器に傷をつけるから」
と保子はいったが、その手は、容一にそっと握られていた。その時の感触が、まだ保子の体に残っている。それは抱かれた感触のように強烈だった。
三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 二」
菊天で容一に会った時、容一は保子の指に指輪のないのを見ていった。
「買ってやろうか」
「いいのよ、お茶をしてると、指輪は邪魔なの。茶器に傷をつけるから」
と保子はいったが、その手は、容一にそっと握られていた。その時の感触が、まだ保子の体に残っている。それは抱かれた感触のように強烈だった。
三浦綾子『果て遠き丘』「影法師 二」