容一に手首をぐいぐい引っぱられて、何十メートルか、斜面を降りた扶代と章子は、あっけにとられていた。

容一に手首をぐいぐい引っぱられて、何十メートルか、斜面を降りた扶代と章子は、あっけにとられていた。
「どうなすったの」
せっかく珍しい野点を見ようと思っていた扶代は、あきれて容一を見た。が、咎めるものの言い方のできない女なのだ。
「どうしたって、お前、あそこは駄目だよ」
「駄目?」
容一はようやく二人の手を放し、草に腰をおろした。
「駄目って、何が駄目なのですか」
もうここからは見えない茶席のほうを扶代は見上げる。近くで数人の若い男女がジンギスカン鍋を突つきながら、『知床旅情』を歌っている。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 八」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 「ね、お父さん。で、もう決まってしまったの」

  4. 「香也子、お前、お姉さんに久しぶりで会ったんだろう。まず挨拶をしたらどうだ。怒るのはそのあとでもいい。なあ、恵理子」 「香也ちゃん、しばらくね」

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  6. あの時よりいちだんと娘らしくなった恵理子が、顔をうつむけて茶を点てている。