子供のように勢いよく走って行く香也子のうしろ姿を、西島広之は微笑して見送った。

子供のように勢いよく走って行く香也子のうしろ姿を、西島広之は微笑して見送った。急な坂道を香也子はつんのめりそうに走って行く。ハラハラして見送っていると、香也子はカーブをまがったところで、勢いよく倒れた。西島は驚いて駆け寄って行った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 西に行けば、道は下って三百メートルほどむこうの柏林に突きあたる。香也子は東にむかって歩いて行く。道端のチモシーが雨にぬれて光っているのが目をひく。角の家の藤がいま盛りで、小さな紫の滝のようだ。

  2. と、その時電話のベルが鳴った。ハッとしたように章子が受話器を取った。 「もしもし、橋宮でございます。あら、政夫さん?」

  3. 炎を見つめながら、恵理子はそのとき、そんなことを思っていた。

  4. 金井はいま、思いきって橋宮容一に、章子との交際を求めたばかりなのだ。

  5. ふっと恵理子は時計を見た。もう十二時半だ。川向こうを見る。やはり青年はきていない。と、その時、「恵理子、お電話よ」 と呼ぶ、母の保子の声がした。

  6. 助手台に乗っていた祖母のツネが、うしろの保子と恵理子をふり返っていった。