二人はいつしか頂上に出た。頂上にはテレビ塔があった。

二人はいつしか頂上に出た。頂上にはテレビ塔があった。ここにも桜は見事に咲いていた。頂上から山の裏手につづく細い道があった。二人は何となくそっちへ歩いて行く。低いタラの木が、みずみずしい芽をつけ、道べには青い蕗が葉を広げはじめている。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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