茶席を出た香也子は、桜の木陰にいる祖母と、母の保子を見出した。

茶席を出た香也子は、桜の木陰にいる祖母と、母の保子を見出した。保子が笑いかけ、近寄ろうとした時、香也子はついと視線をはずして、すぐにその場を離れた。ひどく冷たい表情だった。香也子はうしろもふり向かずに、いましがた隣にいた青年の姿を追った。青年はぶらぶらと、山道を登って行く。香也子は、急ぎ足で後を追った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 青地に白の、水玉模様のこうもり傘をさして、香也子は小雨の外に出た。庭の牡丹がアララギの陰に華やかに咲いている。

  2. 西に行けば、道は下って三百メートルほどむこうの柏林に突きあたる。香也子は東にむかって歩いて行く。道端のチモシーが雨にぬれて光っているのが目をひく。角の家の藤がいま盛りで、小さな紫の滝のようだ。

  3. 恵理子は洗面所を出ると、二階の自分の部屋にあがって行った。

  4. 神社のほうに、何かを囲んで人々が群れていた。その群れの中に和服姿の若い娘たちが二十人ほどいる。

  5. 「香也ちゃん」 たった一人の妹の名を、恵理子はそっと呼んでみる。

  6. 容一は、恵理子の高校の卒業式に扶代にかくれて出席した。