じっと恵理子を見つめている香也子の姿を、ツネと保子が息を殺して眺めている。

じっと恵理子を見つめている香也子の姿を、ツネと保子が息を殺して眺めている。
「知っていてきたのかしら」
「そりゃそうだよお前、あの様子なら」
傍にいる弟子に悟られぬように、二人は低くささやきあう。
「お前を恋しがってきたんだろうよ」
「そうかしら」
保子は首をかしげた。恵理子を見る香也子の目がきびしすぎると、保子は思う。
「後で話しかけてもいいかしら」
さきほど香也子は、「お父さん」と叫んだ。そのあたりに、橋宮容一と妻たちがきているのではないか。
「そうだねえ……声ぐらいかけても」

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 章子のボーイフレンドの金井政夫を、今日ははじめてわが家に呼んだのだ。

  2. 「いつかねえ、旭山で恵理子のきもの姿を見たよ。いい娘になったね」 「…………」 「どうだね、一度お父さんと食事でもしないかね」 「……ハイ……でも」

  3. 「ね、あなた、高砂台はあのあたりかしら」

  4. 「お父さん、あのお点前をしている人……」

  5. と、丘の上に車が現れた。車は真っすぐに香也子のほうに下ってくる。見覚えのある金井政夫の車だ。

  6. そうかしら。女はただの顔見知りの人に、あんなに顔を赤くはしないわ。