父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。

父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。母の保子も、恵理子も、そしてツネも、容一や香也子に会う機会を、つとめて避けたことは、当然である。しかし、香也子にとっては、母や姉はあくまで遠く冷たい存在でしかなかった。母の保子が、どんなに自分を思って泣いているか、姉の恵理子が懐かしがってうわさしているかなど、香也子は想像もしたことがない。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  4. 「おばあちゃん。わたし、お母さんのいうことわかるわ。わたしだって香也ちゃんやお父さんが懐かしいわ」 恵理子が助け舟を出す。

  5. じっと恵理子を見つめている香也子の姿を、ツネと保子が息を殺して眺めている。

  6. 香也子は二人を見ると、ついと顔をそむけた。