父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。

父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。母の保子も、恵理子も、そしてツネも、容一や香也子に会う機会を、つとめて避けたことは、当然である。しかし、香也子にとっては、母や姉はあくまで遠く冷たい存在でしかなかった。母の保子が、どんなに自分を思って泣いているか、姉の恵理子が懐かしがってうわさしているかなど、香也子は想像もしたことがない。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 沢を隔てた向かいの山が、日一日と鮮やかな芽吹きを見せてきている。

  2. 金井政夫は、運動ならスキーでも、野球でも、ホッケーでもやるといった感じの、スポーツ青年に見えた。

  3. 二歳年下だが、八重は凞子と時折まちがわれるほどに、背丈も顔かたちもよく似ている。

  4. 香也子が先に立ち、橋宮容一と妻の扶代、そしてその娘の章子があとにつづく。

  5. 「少し白髪が……」と、保子はやさしく容一を眺めた。

  6. 曇った空の下に、郭公の声がしきりにする。 もう十時だというのに、香也子はネグリジェのまま、一時間も前から三面鏡に向かって化粧していた。