父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。

父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。母の保子も、恵理子も、そしてツネも、容一や香也子に会う機会を、つとめて避けたことは、当然である。しかし、香也子にとっては、母や姉はあくまで遠く冷たい存在でしかなかった。母の保子が、どんなに自分を思って泣いているか、姉の恵理子が懐かしがってうわさしているかなど、香也子は想像もしたことがない。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 香也子は、化粧の仕上がった顔を、さっきから鏡に近づけたり離したりして、眺めている。

  2. 「馬子にも衣装って、ほんとうね、お父さん」  わざと香也子は無邪気にいう。

  3. そのときも、恵理子は焼却炉にゴミを捨て、いつものようにマッチで火をつけた。

  4. その翌日のことだった。保子にいわれて、恵理子はゴミを焼きに外に出た。

  5. 三百坪ほどの広い庭は、なだらかに傾斜しつつ、沢の端に至っている。

  6. 「どうした。コーヒーを飲まないのかい」