父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。

父の橋宮容一は、後妻の扶代と、そのつれ子の章子を家にいれた。母の保子も、恵理子も、そしてツネも、容一や香也子に会う機会を、つとめて避けたことは、当然である。しかし、香也子にとっては、母や姉はあくまで遠く冷たい存在でしかなかった。母の保子が、どんなに自分を思って泣いているか、姉の恵理子が懐かしがってうわさしているかなど、香也子は想像もしたことがない。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 人々の視線は、再び茶席に戻っている。

  4. 義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。

  5. 店内はひっそりとして客が二組ほどしかなかった。ま昼のせいだろう。容一、保子、恵理子の三人が、いちばん隅の席に向かい合っていた。 「いい娘になったねえ。まったくいい娘になった」

  6. 香也子は今朝、新聞をひらき、そこに、五、六行の小さな記事を見て胸をとどろかせた。