八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。

八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。が、長じては、茶道にも華道にも興味がなくなり、まともに香也子が習ったのはピアノだけだった。茶席の作法を香也子はよくは知らない。が、そんなことには頓着なく、香也子は正客の隣に坐った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. と、丘の上に車が現れた。車は真っすぐに香也子のほうに下ってくる。見覚えのある金井政夫の車だ。

  2. 香也子がいった。 「あら、婚約じゃないの? まだ結婚するかどうか、わからないの」

  3. 二歳年下だが、八重は凞子と時折まちがわれるほどに、背丈も顔かたちもよく似ている。

  4. 「ね、お父さん。で、もう決まってしまったの」

  5. 容一に手首をぐいぐい引っぱられて、何十メートルか、斜面を降りた扶代と章子は、あっけにとられていた。

  6. 五月も十日に近い日曜の午後。