八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。

八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。が、長じては、茶道にも華道にも興味がなくなり、まともに香也子が習ったのはピアノだけだった。茶席の作法を香也子はよくは知らない。が、そんなことには頓着なく、香也子は正客の隣に坐った。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. いつも家の中で洋裁をするか、祖母のお茶の稽古の手伝いをするだけの恵理子の生活は、ほとんど異性に接する機会のない生活だった。

  2. 茶席を出た香也子は、桜の木陰にいる祖母と、母の保子を見出した。

  3. 容一がそういったとき、幼い頃、散歩に手を引いてくれた父の手の感触が、ふっと思い出された。

  4. 人々の視線は、再び茶席に戻っている。

  5. 「ねえ、お姉さん」 残ったコップの水を一息に飲んで、香也子はテーブルに片ひじをおき、身を乗り出すようにしていった。

  6. 「ここにいることが、よくわかったねえ」 香也子は容一の顔も見ずに、天井から吊りさげられたランタンに目をやって、