人々の視線は、再び茶席に戻っている。

人々の視線は、再び茶席に戻っている。最後の客が、馴れぬ手つきで茶碗を口に持って行く。釜の前に坐っている恵理子も、いまのかん高い声を聞いていた。恵理子はいま亭主をつとめている。が、ふり返ってそのほうを見ることはしなかった。時にそんな不作法な見物客も野点の席にはくる。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 「ああ、お父さんだ」 のんびりとした容一の声がした。

  4. 若葉となったポプラの木立越しに向こう岸を見た恵理子は、淡い失望を感じて再びミシンの前にすわった。

  5. 家人たちが騎馬のけいこをしているのであろう。土塀の外を大声で笑いながら、二、三騎駈けて行く音がした。

  6. 「おばあちゃん。わたし、お母さんのいうことわかるわ。わたしだって香也ちゃんやお父さんが懐かしいわ」 恵理子が助け舟を出す。