「香也子よ!」
保子は母のツネにささやいた。人々の注視を受けても、香也子は平然としている。
「香也子?」
「そうよ」
保子は母のツネに、体をもたせかけるようにした。
「ここを、わたしの席と知ってきたのかねえ」
「わからないわ」
保子は低く呟いた。
三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集
「香也子よ!」
保子は母のツネにささやいた。人々の注視を受けても、香也子は平然としている。
「香也子?」
「そうよ」
保子は母のツネに、体をもたせかけるようにした。
「ここを、わたしの席と知ってきたのかねえ」
「わからないわ」
保子は低く呟いた。
三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 七」
『果て遠き丘』小学館電子全集