あの時よりいちだんと娘らしくなった恵理子が、顔をうつむけて茶を点てている。

あの時よりいちだんと娘らしくなった恵理子が、顔をうつむけて茶を点てている。緋の毛氈が顔に映って、恵理子の顔は幾分バラ色になっていた。
「帰ろう」
あわてて容一は香也子の手をひいた。気づくと、ツネも保子も赤いふくさを帯じめにはさんで、弟子らしい娘たちと談笑している。こちらは扶代と章子をつれている。
(とんだ鉢合わせだ)
何も扶代と章子を、保子に見せつけることはないのだ。が、香也子はいった。
「わたし、お茶をいただきたいの」
「香也子!」
容一はあわてた。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 「少し白髪が……」と、保子はやさしく容一を眺めた。

  2. 恵理子の着ふるしを、香也子はよく着せられた。

  3. 「見事だねえ。恵理子」

  4. 「おいしいわ。とってもおいしいわ」 香也子がいった。テーブルの上には、牛肉とピーマンと地物の筍のいため煮、毛蟹を使ったフーヨーハイ、それに容一の好きな八宝菜、酢ブタなどがいっぱいに並べられている。

  5. そんな容一に、保子から電話がきた時、容一はわれにもなく心がゆらいだ。

  6. 絹子が去ってから、整がいった。 「章子ちゃんの恋人だろう、くるのは?