中学に入学するとき、恵理子はセーラー服をつくってもらった。

中学に入学するとき、恵理子はセーラー服をつくってもらった。
香也子は、その入学式当日の朝のことを、はっきりと覚えている。セーラ服を着た恵理子が、
「お母さん!」
と悲鳴をあげた。駆けつけた保子が、ひだにしたがって切られたそのスカートを見て、
「香也子!」
と、香也子を睨んだ。
「なあに」
香也子はスカートを見て、
「まあひどい。どうしたの、そのスカート」
と白ばくれた。が、そのとき、保子と恵理子が自分を見た眼の冷たさは、いまも香也子の胸にはっきりと刻み込まれている。自分が悪かったとしても、あの眼の冷たさは、香也子にとっては、ひど過ぎる刑罰に思われた。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 駆けこむように家にはいってから、恵理子は自分の感情の動きにふっと笑い出したくなった。

  2. 青地に白の、水玉模様のこうもり傘をさして、香也子は小雨の外に出た。庭の牡丹がアララギの陰に華やかに咲いている。

  3. 「まあ、すてき!」 崖ぶちのあずまやにはいった香也子が叫んだ。

  4. 「混むかねえ、この天気だと」

  5. 「卓球ができれば、立派なもんですよ。わたしは自転車にも乗れない」

  6. じっと恵理子を見つめている香也子の姿を、ツネと保子が息を殺して眺めている。