香也子は今朝、新聞をひらき、そこに、五、六行の小さな記事を見て胸をとどろかせた。

香也子は今朝、新聞をひらき、そこに、五、六行の小さな記事を見て胸をとどろかせた。それは、藤戸ツネが旭山において野点の会をするという記事だった。藤戸ツネは、香也子の母の母だ。つまり、香也子にとって祖母である。その茶会には、恐らく母の保子も、娘の恵理子もきているにちがいない。香也子は、今日が恵理子に会う機会だと思った。香也子は、保子よりも、姉の恵理子を見たかったのだ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 旭山は、恵理子たちの家から車で二十分ほどのところにある美しい小山である。

  2. 「ここにいることが、よくわかったねえ」 香也子は容一の顔も見ずに、天井から吊りさげられたランタンに目をやって、

  3. いつも家の中で洋裁をするか、祖母のお茶の稽古の手伝いをするだけの恵理子の生活は、ほとんど異性に接する機会のない生活だった。

  4. 母の保子は、朝起きるとすぐに掃除をはじめた。

  5. 「ああ、お父さんだ」 のんびりとした容一の声がした。

  6. と、ビールを飲みながら、ふっと笑って、 「いやですねえ。昔の話をむし返して。