香也子は今朝、新聞をひらき、そこに、五、六行の小さな記事を見て胸をとどろかせた。

香也子は今朝、新聞をひらき、そこに、五、六行の小さな記事を見て胸をとどろかせた。それは、藤戸ツネが旭山において野点の会をするという記事だった。藤戸ツネは、香也子の母の母だ。つまり、香也子にとって祖母である。その茶会には、恐らく母の保子も、娘の恵理子もきているにちがいない。香也子は、今日が恵理子に会う機会だと思った。香也子は、保子よりも、姉の恵理子を見たかったのだ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 2019(令和元)年 6月18日:オーディオライブラリーがポッドキャストでも楽しめるように

  2. 駆けこむように家にはいってから、恵理子は自分の感情の動きにふっと笑い出したくなった。

  3. 金井が、香也子の両頬を手で挟んだ。そしてそっと唇を近づけようとした時だった。うしろで、けたたましくクラクションが鳴った。

  4. 静かに戸をあける。鈴がリンリンと澄んだ音を立てた。

  5. 義父の容一にニヤリと笑われて、章子は耳まで真っ赤にした。

  6. 店内はひっそりとして客が二組ほどしかなかった。ま昼のせいだろう。容一、保子、恵理子の三人が、いちばん隅の席に向かい合っていた。 「いい娘になったねえ。まったくいい娘になった」