神社の下の大きな桜の木の下に、赤い毛氈が敷かれ、野点が催されていた。桜の幹に「薫風」と墨書された短冊が貼られ、クリーム色の地にみどりの葉を散らしたつけさげを着た娘が、うしろ向きに茶をたてている姿が見えた。
「お茶よ、お父さん」
しっかりと容一の手をとったまま、香也子は人をかきわけるようにして、毛氈に近づく。
三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集
神社の下の大きな桜の木の下に、赤い毛氈が敷かれ、野点が催されていた。桜の幹に「薫風」と墨書された短冊が貼られ、クリーム色の地にみどりの葉を散らしたつけさげを着た娘が、うしろ向きに茶をたてている姿が見えた。
「お茶よ、お父さん」
しっかりと容一の手をとったまま、香也子は人をかきわけるようにして、毛氈に近づく。
三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集