「ね、あなた、高砂台はあのあたりかしら」

「ね、あなた、高砂台はあのあたりかしら」
扶代の指さす彼方に、旭川の街と田園をぐるりと囲むなだらかな丘が、やわらかくかすんでいる。
「いや、もっと右手だろう」
容一は腕を組んで目を細めた。小児科医と見られるやさしい表情である。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 「おいしいわ。とってもおいしいわ」 香也子がいった。テーブルの上には、牛肉とピーマンと地物の筍のいため煮、毛蟹を使ったフーヨーハイ、それに容一の好きな八宝菜、酢ブタなどがいっぱいに並べられている。

  2. 若葉となったポプラの木立越しに向こう岸を見た恵理子は、淡い失望を感じて再びミシンの前にすわった。

  3. 静かに戸をあける。鈴がリンリンと澄んだ音を立てた。

  4. この道はめったに車は通らない。景色はいいが、あまり人に知られていない道なのだ。 「わたしねえ、こんな静かなところが好きなの」

  5. 「馬子にも衣装って、ほんとうね、お父さん」  わざと香也子は無邪気にいう。

  6. 二人は顔を見合わせて、椅子に腰をおろした。 「これで第一関門はパスしたようだね」