「まあ、すてき!」 崖ぶちのあずまやにはいった香也子が叫んだ。

「まあ、すてき!」
崖ぶちのあずまやにはいった香也子が叫んだ。
いきなり眼下から、上川盆地が開けていた。水のはいった田の面が、鏡をはめこんだようだ。その無数の鏡が、遠く北に及び、点在する赤や青の農家の屋根が美しい。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  4. 「お母さん、お父さんが一緒に食事をしようって。行ってもいいのかしら」 「いいわよ、お母さんも一緒に行くから」 「でも、おばあちゃんに知られたら……」

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  6. あの時よりいちだんと娘らしくなった恵理子が、顔をうつむけて茶を点てている。