幾折れもの道が木立をぬって頂上へとつづいている。

幾折れもの道が木立をぬって頂上へとつづいている。が、香也子たちは、急勾配の草原を登って行く。と、山の中腹に何百坪かの平地があった。そこにはひときわ鮮やかな桜が幾本も立ち並び、顕彰碑や、あずまやがあった。あずまやにつづいて、二、三軒出店が立ち、左手山際寄りに、古く小さな神社があった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 「あの、あと二十分ぐらいしたら、おみえになる筈ですけれど」

  2. が、近ごろは、なぜか時おり父がふと懐かしくなる。

  3. 炎を見つめながら、恵理子はそのとき、そんなことを思っていた。

  4. 子供のように勢いよく走って行く香也子のうしろ姿を、西島広之は微笑して見送った。

  5. 「わたし、あまり得意なものがないんです」 「そうでもないんですのよ。人様のスーツや、オーバーを縫いますしね。お茶も、将来はおばあちゃんのあとを継げるんじゃないですか」

  6. 「ねえ、わたしたち三人は、水入らずよね。血が通っているんですもの。章子さんや小母さんとは、ちがうわよねえ」