幾折れもの道が木立をぬって頂上へとつづいている。

幾折れもの道が木立をぬって頂上へとつづいている。が、香也子たちは、急勾配の草原を登って行く。と、山の中腹に何百坪かの平地があった。そこにはひときわ鮮やかな桜が幾本も立ち並び、顕彰碑や、あずまやがあった。あずまやにつづいて、二、三軒出店が立ち、左手山際寄りに、古く小さな神社があった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 人々の視線は、再び茶席に戻っている。

  2. 「手があがったかね」コップにビールを注いでやりながら、容一がいう。

  3. 橋宮容一は、小料理屋菊天の一室に保子を待っていた。

  4. この道はめったに車は通らない。景色はいいが、あまり人に知られていない道なのだ。 「わたしねえ、こんな静かなところが好きなの」

  5. 「ねえ、お父さん。わたしも勤めたいわ」 「勤める?」 容一の眉間にたてじわが寄る。

  6. と、ビールを飲みながら、ふっと笑って、 「いやですねえ。昔の話をむし返して。