幾折れもの道が木立をぬって頂上へとつづいている。

幾折れもの道が木立をぬって頂上へとつづいている。が、香也子たちは、急勾配の草原を登って行く。と、山の中腹に何百坪かの平地があった。そこにはひときわ鮮やかな桜が幾本も立ち並び、顕彰碑や、あずまやがあった。あずまやにつづいて、二、三軒出店が立ち、左手山際寄りに、古く小さな神社があった。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. いい終わらぬうちに、ドアをノックしてはいってきたのは、香也子だった。

  2. と、丘の上に車が現れた。車は真っすぐに香也子のほうに下ってくる。見覚えのある金井政夫の車だ。

  3. 「ねえ、お姉さん」 残ったコップの水を一息に飲んで、香也子はテーブルに片ひじをおき、身を乗り出すようにしていった。

  4. 章子は再び帯のあたりに手をやった。

  5. 「旭山の桜は、もうすっかり散ったでしょうね」 「何をいっているんだよ。一週間も前に散ったんじゃないのかい」

  6. 旭山は、恵理子たちの家から車で二十分ほどのところにある美しい小山である。