「あなた、よかったわ、香也ちゃんに誘われて。旭川にこんなきれいなところがあるとは、知りませんでしたよ」

「あなた、よかったわ、香也ちゃんに誘われて。旭川にこんなきれいなところがあるとは、知りませんでしたよ」
「きれいでしょう。お父さんったら、高砂台にいれば、どこも見る必要がないなんて、威張っていたけれど……」
白いワンピースを着た香也子が、ひどく機嫌がいい。
今日になって、突然香也子は、容一に花見につれて行ってほしいとねだったのだ。容一は仕事があるから、といったんは断ったが、あまりに執拗にねだられて、いたし方なく仕事を早めに終えて出てきたのだ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  5. そうかしら。女はただの顔見知りの人に、あんなに顔を赤くはしないわ。

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