「大変な人ねえ」 扶代が楽しげにいった。

「大変な人ねえ」
扶代が楽しげにいった。
「これでもだいぶ帰ったんだろう。もう四時過ぎだからねえ」
容一が章子をふり返る。青いスーツを着た章子は、屈んで草原に群れ咲く白い小さなふくべらの花を摘んでいる。容一は、めだたぬ可憐なふくべらが章子のようだと思った。紫のすみれも、ふくべらにまじって咲いていた。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  3. 三百坪ほどの広い庭は、なだらかに傾斜しつつ、沢の端に至っている。

  4. ふっと恵理子は時計を見た。もう十二時半だ。川向こうを見る。やはり青年はきていない。と、その時、「恵理子、お電話よ」 と呼ぶ、母の保子の声がした。

  5. それは、数日前、従兄の小山田整から、恵理子のうわさを聞いていたからだ。

  6. ガラシャ夫人の名を、はじめてわたしが聞いたのはいつの頃であったろうか。