香也子が先に立ち、橋宮容一と妻の扶代、そしてその娘の章子があとにつづく。

香也子が先に立ち、橋宮容一と妻の扶代、そしてその娘の章子があとにつづく。桜の下の草原を、爪先立ちに登りながら、ときどき立ちどまる。濃淡さまざまの桜の色が、うすぐもりの空の下に、しっとりとあでやかだ。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 六」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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