その次の日も、同じ時刻、向こう岸に青年を見た。

その次の日も、同じ時刻、向こう岸に青年を見た。が、それは二階の恵理子の部屋からだった。そして昨日の水曜日にまた恵理子は、青年を見かけたのだった。青年は、昼休みに、あの川岸でギターを楽しんでいるようだった。
(どうして同じところに……)
恵理子は、青年が自分に会うのを期待して、恵理子の家のすぐ向こうに現れるような気がした。そう考えることはうぬぼれのような気もした。会うのを期待しているのは、自分のほうかもしれないと、すぐに恵理子は思い返してみた。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 五」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 「まあ? 恵理子姉さんって、そんなに魅力的?」

  2. 「まあ、きれい!」 思わず恵理子は声をあげた。

  3. 金井はいま、思いきって橋宮容一に、章子との交際を求めたばかりなのだ。

  4. 「ああ、ああ、いつきてもいい丘だなあ、ここは。こぶしほころび、桜咲きか……」

  5. 整は今日、章子からの電話を受けて、金井の相伴にやってきたのだった。整の車がバス通りを下って行った時、香也子が金井の車に乗るのを見かけた。

  6. 「何を考えていたんだ」