その次の日も、同じ時刻、向こう岸に青年を見た。

その次の日も、同じ時刻、向こう岸に青年を見た。が、それは二階の恵理子の部屋からだった。そして昨日の水曜日にまた恵理子は、青年を見かけたのだった。青年は、昼休みに、あの川岸でギターを楽しんでいるようだった。
(どうして同じところに……)
恵理子は、青年が自分に会うのを期待して、恵理子の家のすぐ向こうに現れるような気がした。そう考えることはうぬぼれのような気もした。会うのを期待しているのは、自分のほうかもしれないと、すぐに恵理子は思い返してみた。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 五」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. と、丘の上に車が現れた。車は真っすぐに香也子のほうに下ってくる。見覚えのある金井政夫の車だ。

  2. その時、階段に静かに足音がして恵理子が茶の間にはいってきた。 「あら、もう三時? おばあちゃんお帰りなさい」

  3. 思わず立ちあがった橋宮容一は、こちらに向かってまっすぐ歩いてくる香也子に、一瞬弱々しい微笑を向けた。が、香也子は、唇をキュッと閉じ、容一と恵理子を無視して、テーブルに近づいてきた。

  4. 容一は立ちあがり、 「ま、この後は君たち二人で……な、扶代」

  5. 旭山は、恵理子たちの家から車で二十分ほどのところにある美しい小山である。

  6. 静かに戸をあける。鈴がリンリンと澄んだ音を立てた。