駆けこむように家にはいってから、恵理子は自分の感情の動きにふっと笑い出したくなった。

駆けこむように家にはいってから、恵理子は自分の感情の動きにふっと笑い出したくなった。昨日までは見も知らなかった青年に、ガールフレンドがいようがいまいが、自分には関わりのないことではないか。すねたように青年に背を向けていた自分が、ひどくこっけいに思われた。
(言葉をかわしたこともないのに)

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 五」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 十二畳の居間に、母の保子はテレビを見ていた。

  2. そこに、妻の扶代と章子がテラスから出てきた。

  3. いま思うと、外から帰ってきた父が、洗面所で、

  4. お手伝いの絹子が、コーヒーを持ってテラスから芝生に降りてきた。

  5. と、その時電話のベルが鳴った。ハッとしたように章子が受話器を取った。 「もしもし、橋宮でございます。あら、政夫さん?」

  6. 章子は立ちあがって、 「あ、香也ちゃん、すみません」 と、盆を受けとろうとした。