容一は立ちあがり、 「ま、この後は君たち二人で……な、扶代」

容一は立ちあがり、
「ま、この後は君たち二人で……な、扶代」
「ほんとうに、ごゆっくりなさって、夕食でも食べていらしてね」
ドアに手をかけた容一がふり返って、
「ああ、近頃の若い人たちは、婚前交渉とか、同棲とか、いささかハッスルしすぎるようだがね。それだけは、式を挙げるまでお預けにしてほしいもんだね」
金井は立ちあがって不動の姿勢をした。
「は、あの……」
答えぬうちに、容一も扶代もドアの外に出ていた。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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