「どうも、突拍子もない子でねえ。驚いたでしょう、金井君」

「どうも、突拍子もない子でねえ。驚いたでしょう、金井君」
容一は大島のたもとからタバコを取り出しながらいった。
「いえ、はきはきしていて、気持ちがいいです」
「ほんとに香也子は、はきはきしてますのよ」
のんびりした口調で扶代がいった。それは香也子を肯定している語調だった。章子はちらりと不満そうに母を見た。
(金井さんは、はきはきしている人が好きなのかしら)

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 思わず立ちあがった橋宮容一は、こちらに向かってまっすぐ歩いてくる香也子に、一瞬弱々しい微笑を向けた。が、香也子は、唇をキュッと閉じ、容一と恵理子を無視して、テーブルに近づいてきた。

  2. 「馬子にも衣装って、ほんとうね、お父さん」  わざと香也子は無邪気にいう。

  3. そのときも、恵理子は焼却炉にゴミを捨て、いつものようにマッチで火をつけた。

  4. イタリヤポプラの下までくると、恵理子はポプラの幹によりかかって、まだ真っ白い大雪山を眺めた。

  5. 「大変な人ねえ」 扶代が楽しげにいった。

  6. 「わたし、あまり得意なものがないんです」 「そうでもないんですのよ。人様のスーツや、オーバーを縫いますしね。お茶も、将来はおばあちゃんのあとを継げるんじゃないですか」