「どうも、突拍子もない子でねえ。驚いたでしょう、金井君」

「どうも、突拍子もない子でねえ。驚いたでしょう、金井君」
容一は大島のたもとからタバコを取り出しながらいった。
「いえ、はきはきしていて、気持ちがいいです」
「ほんとに香也子は、はきはきしてますのよ」
のんびりした口調で扶代がいった。それは香也子を肯定している語調だった。章子はちらりと不満そうに母を見た。
(金井さんは、はきはきしている人が好きなのかしら)

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 客が帰ったあと、母はその客のさわったとおぼしきものいっさいの消毒をする。

  2. 「帰ってきて、うがいをしたの? 手は?」

  3. 「いま、お兄さん、好きな人ができたらって、おっしゃったわね。じゃ、その好きな人がお兄さんだったら、どうするの」 「え?」

  4. 金井はいま、思いきって橋宮容一に、章子との交際を求めたばかりなのだ。

  5. 「素顔のほうがきれいだよ、香也子」 「まさか」 化粧した顔のほうがきれいだと、香也子は信じきっている。

  6. 鳶の啼く声に、小山田整が空を見あげていった。