「どうも、突拍子もない子でねえ。驚いたでしょう、金井君」

「どうも、突拍子もない子でねえ。驚いたでしょう、金井君」
容一は大島のたもとからタバコを取り出しながらいった。
「いえ、はきはきしていて、気持ちがいいです」
「ほんとに香也子は、はきはきしてますのよ」
のんびりした口調で扶代がいった。それは香也子を肯定している語調だった。章子はちらりと不満そうに母を見た。
(金井さんは、はきはきしている人が好きなのかしら)

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

関連記事

  1. 今夜も庭つづきの崖の下から蛙の声が賑やかに聞こえてくる。崖下の沢には田んぼがあるのだ。

  2. いい終わらぬうちに、ドアをノックしてはいってきたのは、香也子だった。

  3. 恵理子が柄杓を釜にいれた時、青年がいった。

  4. 八歳のころから、母が家を出て行くまでの二年ほど、香也子は祖母のツネに茶を習ったことがある。

  5. 「ねえ、わたしたち三人は、水入らずよね。血が通っているんですもの。章子さんや小母さんとは、ちがうわよねえ」

  6. 出稽古から帰ってきたツネのきものを、保子はたたみながら、 「ねえ、お母さん」 と、顔を向けずにいう。