「ね、お父さん。で、もう決まってしまったの」

「ね、お父さん。で、もう決まってしまったの」
「決まった? 何がだね」
「だって金井さんは、章子さんをいただきたいとか、何とかおっしゃったんでしょう?」
「ああ、そのことか」
容一が苦笑し、みんなも何となく笑った。
「そう、おきまりになったの、よかったわね。金井さん、章子さんって、とてもいい人よ。こんないい人って、旭川中探したっていないと思うわ」
誰が聞いても、善意にあふれたいい方だった。章子はうつむき、金井は頭をかいた。そして、容一がいった。
「こりゃ、香也子が月下氷人のようなもんじゃないか。ま、金井君、とにかくそのつもりで……結婚を前提にしての交際を、よろしくおねがいするよ」
「は、ありがとうございます」
金井は立ちあがって、深々と礼をした。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  1. 行く手の畔に立つ数本のイタリヤポプラを見た。

  2. 店内はひっそりとして客が二組ほどしかなかった。ま昼のせいだろう。容一、保子、恵理子の三人が、いちばん隅の席に向かい合っていた。 「いい娘になったねえ。まったくいい娘になった」

  3. 二歳年下だが、八重は凞子と時折まちがわれるほどに、背丈も顔かたちもよく似ている。

  4. 菊天で容一に会った時、容一は保子の指に指輪のないのを見ていった。 「買ってやろうか」

  5. 恵理子と別れたのは、香也子が十歳のときだった。

  6. 香也子が先に立ち、橋宮容一と妻の扶代、そしてその娘の章子があとにつづく。