いい終わらぬうちに、ドアをノックしてはいってきたのは、香也子だった。

いい終わらぬうちに、ドアをノックしてはいってきたのは、香也子だった。香也子は銀盆の上にフルーツポンチを運んできたのだ。
「いらっしゃいませ」
香也子の口もとにかわいい笑くぼができた。金井は黙って頭をさげた。はいってきたのはここの家の娘なのか、お手伝いなのか、確かめる心のゆとりもなかった。せっかくの話の腰を折られたのだ。金井はじっと自分の膝頭を見ている。

三浦綾子『果て遠き丘』「春の日 四」
『果て遠き丘』小学館電子全集

オーディオライブラリー『果て遠き丘』朗読:七瀬真結

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  6. 正式に保子と別れてからは、電話はおろか、葉書一枚きたこともない。